認知症徘徊コラム

認知症高齢者の親を施設に入れるタイミングは?


 認知症が進行していくにつれ症状が顕著に表れてくると、常に見守らなくてはいけなくなり、家族の介護の負担も大きくなっていきます。

 特に徘徊症状が頻繫に現れる場合重大な事故に遭ったり、事件に巻き込まれる可能性も高くなります。
過去には、認知症高齢者の徘徊による鉄道事故で多額の損害賠償を請求されるという事例もありました。
認知症の徘徊における事故事例とリスク|防ぐための見守り策とは?

介護サービスを利用していても、在宅での介護や認知症高齢者の一人暮らしでは限界がきてしまうこともあります。
そこで今回は「認知症高齢者の親を施設に入れるタイミング」について記事で説明しています。

認知症の進行や症状によって、施設入所を検討するタイミングは異なりますが、参考にしていただけると幸いです。

1.認知症高齢者の施設入所を考えるタイミングは「介護の限界」

 施設入所を考えるベストなタイミングは「日常生活や心と身体に限界を感じた時」です。

 厚労省のデータによると、令和4年中の自殺の年齢別と原因・動機で50〜59歳の介護疲れによる自殺が最も多くなっています。
50〜59歳というと、親も高齢になってきて介護が必要な年齢に差し掛かっており、なおかつ自身も定年を目前にして、仕事や家庭両方で重要な立ち位置にいる状況かと思います。
また、コロナ禍になってから、介護する側が親より先に亡くなってしまうケースが増えたともいわれています。

日常的なストレスから心身の疲れが溜まっていくと、心から休める時間がなく、かなりの介護負担を抱えてしまうこともあるようです。
ここでは、施設入所を考えるタイミングについて詳しく説明していきます。

睡眠不足が続く
 例えば同居している場合、要介護者(介護される側)に夜中に何度も起こされる、深夜早朝の頻繁な徘徊などで睡眠を阻害されることがあります。
睡眠不足が続くと、抑うつ状態や免疫力の低下、集中力の低下、イライラなどの症状が出てきます。
そして、要介護者に対して強くあたってしまったり、集中力が下がると事故を起こすなどといった危険も伴われます。
日々のちょっとした問題に対しても自己嫌悪に苛まれることもあり、悪循環な環境が生まれてしまいます。
もし、自身が日常的に睡眠不足だと感じていたら、認知症高齢者の親を施設入所させるタイミングかもしれません。

日常生活に支障が出る
 介護者(介護する側)が仕事をしている、親と同居していない、子育て中などといった場合、そこに介護が加わることで日常生活に支障が出ることもあります。
退職しないと介護ができない状態になったなど、「介護」によって自身の生活に支障が出てきたら、施設入所を検討しても良いのではないでしょうか。

介護負担が増えたと感じる
 認知症は、徐々に症状が進行していく進行性の病気です。そのため症状が進んでいくにつれて、介護負担も増えていきます。
介護サービスを併用して上手に乗り越えられれば良いのですが、いつまで続くか分からない「介護」に限界がきてしまいます。

徘徊などの認知症状がひどくなった
 「認知症」という病気は進行性の病気です。認知症は完治の難しい病気とされていますが、薬によって進行を抑えたり緩めることは可能です。
しかし、脳に刺激がない生活が続いたり、他の病気の悪化や心理的要因、環境的要因など何かのきっかけで悪化することもあります。

 例えば認知症状の一つである徘徊が悪化した場合、GPS機器を持たせるなどの対策を講じていても、離れている間は常に所在が気になってしまい物事に集中できないこともあります。
その他、暴言・暴力がひどくなった、せん妄がひどくなったなど、認知症状がひどくなってきたら、介護者の体調が崩れてしまう前に入所を検討するといいでしょう。

2.認知症の症状が出ていても施設に入れる?

 「認知症だけど施設に入れる?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
答えは、施設に入ることは「可能」です。
認知症で徘徊する親の施設入所はできる?介護施設探しの相談先はどこ?

しかし、入居基準というものがあり施設により条件が違います。
入所施設には介護保険施設である公的施設
● 特別養護老人ホーム
● 介護療養型医療施設
● 介護老人保健施設
● 介護医療院
民間施設
● グループホーム
● 介護付き有料老人ホーム

など多種多様にあります。

特に、グループホームでは「認知症」の方を対象に専門的なケアを提供していて認知症状が軽度からの入居が可能です。

「徘徊で迷惑をかけてしまわないか」といった心配もあるかもしれませんが、専門的に対応しているので安心してください。
グループホームは地域密着型なので、馴染みのある地元に住みながら生活を送ることができます

徘徊の症状がある場合、施設によっては入居の際にGPS機器のレンタルをお願いされたということもあるようです。
施設利用者の徘徊が問題になっているといった背景も理由の一つになっているとのことでした。

3.「老人ホーム相談プラザ」で相談

 当社(ケアミックス(株))が運営する「老人ホーム相談プラザ」で相談すれば、無料で全国の入居施設先を探すことができます。

見学同行や入居後のアフターフォローなど、本当に必要とするサービスが充実しているので、入居を考えているけれど悩んでいるという方はぜひ一度相談してみてください。

4.「介護うつ」にならないために

 在宅で介護をしていくことは相当なストレスがかかります。
● 疲労感
● 食欲、意欲の低下
● 無気力、周囲への無関心
など、一般的なうつと症状は同じです。

まじめで責任感が強い方や人の感情に敏感な方はもちろん、認知症高齢者の親の介護をしている方は、誰でも介護うつになってしまう可能性を持っています。
「頑張りすぎない・周囲に頼る・相談する」を忘れずに、ストレスを発散して無理のない介護をして欲しいです。

5.認知症の親を施設に入れるタイミング|まとめ

認知症高齢者の介護に限界を感じたら、施設に入れるタイミングとして考えてみても良いでしょう。
また、いきなりの「入居」に抵抗があったら短期入所施設(ショートステイ)を利用するのもおすすめです。

施設に入れるタイミングは、本人・家族の都合もあり難しい部分もありますが、だからこそ早めの段階から話し合っておくと、スムーズに準備ができると思います。
介護者の身体と生活を大切にして、良い選択ができることを願っています。

参考
老人ホーム相談プラザ
厚生労働省 自殺の統計
(第3章 令和4年中における自殺の内訳 付録1 年齢別、原因・動機別自殺者数)

https://www.ninchisho-haikai-gps.com/gps_rn/wp-content/themes/cure_tcd082/img/common/no_avatar.png

執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士9年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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