環境省では令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップで販売される犬や猫についてマイクロチップの装着が義務化されました。
ペットにマイクロチップを埋め込むことで、迷子になった時や災害・事故にあった時などに身元の確認が取りやすいなどといったメリットがあります。
また、動物への負担・影響も少ないとされています。
では、人体へのマイクロチップの埋め込みはどうでしょうか?
日本において、マイクロチップの体内への埋め込みは現時点では「自己責任」となっています。
しかし、スウェーデンではマイクロチップの皮膚下移植が進んでおり、アメリカの自動販売機メーカーでは、埋め込みに同意した従業員を対象にマイクロチップの埋め込みを実施しているとのことです。
先ほど、日本ではマイクロチップの埋め込みは「自己責任」とお伝えしましたが、実際にマイクロチップを体内に埋め込んでいる人もいます。
マイクロチップは人体への影響はないとのことで、MRIや医療行為も特に問題ないと言われています。
しかし、セキュリティーやプライバシーの侵害、人体への影響についてもまだ不安・懸念が残りますよね。
今回の記事では
● マイクロチップとGPSの違い
● 埋め込む際の不安と課題とは
● 日本と海外のマイクロチップ活用
● 認知症患者の徘徊対策で使えるのか?
などについて解説しています。
よかったら最後までご覧ください。
1.マイクロチップとGPSの違い
マイクロチップとGPSは全くの別物と言っていいでしょう。
それぞれの役割を簡単に紹介します。
● マイクロチップ…電子標識機器。重要な個人情報を保存する小さなチップ。GPS機能はついていない。
● GPS…全地球測位システム。人工衛星の発する電波を利用し位置を測定する。
一般的な埋め込み型マイクロチップには、プライバシーの観点からGPS機能がついていません。
例えば、認知症患者が徘徊したときの捜索にGPSは有効です。
しかし、マイクロチップを埋め込んで位置情報を把握するとなると、プライバシーの問題や故障した際のメンテナンス方法などといった、大きな課題があると思います。
衣類に名札をつけたり、GPS機器の小型化によって持ち運びがしやすくなったという点から、代用は可能であり実用性は現時点ではないと考えられます。
2.日本と海外のマイクロチップの活用方法
冒頭でもお伝えした通り、日本では令和4年6月1日から犬や猫のペットにマイクロチップの埋め込みが義務化されました。
海外ではさらに進んで、人体へのマイクロチップの埋め込みを積極的に実施している国もあります。
日本国内と海外における、実際のマイクロチップの活用方法を紹介します。
日本
日本では犬や猫、ハムスターやウサギなどの小動物への埋め込みも可能です。
哺乳類のほかにも、鳥類・爬虫類(カメやヘビなど)・両生類(カエルなど)・魚類と多種多様な生物に埋め込むことができますが、動物種や年齢、埋め込むために一定の大きさが必要になります。
海外
スウェーデンではマイクロチップへの埋め込みが盛んと言われており、国民の数千人が体内にマイクロチップを埋め込んでいます。
理由として、スウェーデンは個人情報を共有する文化が根付いているようで、個人情報の取り扱いに国民の抵抗が少ないとも考えられます。
マイクロチップは、施錠解錠の鍵、電車の乗車券、アクセスキー、ウォレットなど様々な用途で利用されているとのこと。
また、ドイツでは自身の遺書のリンクを記録させた人もいるようです。
将来的にはクレジットカードとしても使えるようになるとも言われており、人と最先端のテクノロジーで便利な世界になっていくでしょう。
3.埋め込み型マイクロチップへの不安と課題・人体への影響は?
不安と課題
持ち運ぶ荷物も少なくなるなど便利であるとはいえ、マイクロチップの埋め込みにはいくつか課題もあります。
● 人体への影響
● 故障時のメンテナンス
● セキュリティは十分であるか
● 通信障害などで使用できない時
中でも個人情報やセキュリティへの不安を抱く方は多いのではないでしょうか。
重要な個人情報を登録してしまうと、ハッキングされたときに大きな被害を受けるリスクが高くなってしまいます。
人体への影響
人体のほか、飛行機搭乗の際の金属探知機やMRI・医療行為など、日常生活への影響は特に問題はないとされています。
マイクロチップ自体はとても小さいので、太めの注射針を通して入れることができるとのことです。
しかし、正しい方法で行わないと感染症の危険性があるので、人体への影響として注意が必要になります。
まだ発展途中である埋め込み型のマイクロチップですが、誰もが安心・安全に使えるよう今後に期待したいと思います。
4.マイクロチップは認知症の徘徊対策で使えるのか?
認知症患者を抱える家族の大きな悩み事として「徘徊」があります。
十分に徘徊対策をしていても、一瞬の隙に外に出て徘徊してしまい事件や事故に繋がることもあります。
マイクロチップが認知症の徘徊対策として有効にも感じますが、現段階で認知症の徘徊対策として活用することは難しいでしょう。
プライバシーや人権問題に関わってくることはもちろん、バッテリーや電波も要するので、交換・修理などメンテナンスの必要性が出てきます。
充電においては、スマホのワイヤレス充電が可能な時代になってきたこともあり、それらを応用したマイクロチップの充電方法も今後あるかもしれません。
認知症の徘徊対策にマイクロチップは非現実的に感じますが、技術が進んでマイクロチップの埋め込み化が普及した際は、認知症患者の徘徊対策を目的としたマイクロチップを開発する企業も出てくるのではないかと思います。
5.まとめ
マイクロチップとGPSの違いや、海外での活用例、認知症の徘徊対策として活用できるのかなどを紹介しました。
日本ではマイクロチップの埋め込みは「自己責任」とされていますが、様々なリスクやプライバシー・人権問題にも関わってくることを十分に理解して扱いたいところです。
現状、認知症の徘徊対策としてマイクロチップを使用することはできませんが、もし実用化されたときには非常に有効なアイテムとして普及していくとともに、徘徊で困っているご家族の心強い味方になってくれることを期待していきたいと思います。
参考記事
・マイクロチップとはどんなものなの? (富山県)
・マイクロチップを用いた動物の個体識別(日本獣医師会)
・動物の愛護及び管理に関する法律に基づく 犬と猫のマイクロチップ情報登録 (環境省)
・犬と猫のマイクロチップ情報登録について(環境省)
執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士9年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。