「最近、徘徊が目立つようになった」
「もしかして、認知症かも?」
両親や身近な人が認知症になってしまったらどうしようと不安を抱くことは誰にでもあります。
認知症は早期発見が重要であり、適切な対応をすることで進行を遅らせることができます。
介護認定を受けていればケアマネが主な相談先ですが、認定を受けていない場合はどうしたらいいか分かりません。
また、本人を認知症検査のために病院へ連れて行きたいと思っても、家族の声はなかなか聞き入れてもらえず連れて行くのにも一苦労です。
本記事では
・認知症の特徴と主な相談先
・介護疲れを上手に乗り切る方法
を中心に解説します。
家族が介護をするときは、できるだけ介護サービスに頼り、頑張りすぎないことが大切です。終わりの見えない介護を頑張りすぎてしまうと、心身の不調を招くことも。
私たち介護従事者は悩みごとが小さなことであっても、いつでも頼ってほしいと思っています。一人で悩まずに、まずは専門機関に相談することが「介護」とうまく付き合う何よりの方法です。
1.認知症の特徴と主な相談先
認知症の特徴に「徘徊、もの忘れ、精神面や理解力、注意力などの低下」などが挙げられます。
例えば「もの忘れ」の場合、朝食の内容ではなく、朝食をとったかどうか行動自体を忘れていることが多いと認知症の可能性が高くなります。
認知症発見のきっかけには
・家族の顔が分からなくなった
・常にぼーっとしているようになった
・お風呂に入らない、嫌がるようになった
などがあります。
認知症に対する主な相談先は
⒈かかりつけ医
⒉もの忘れ外来
⒊地域包括支援センター
⒋認知症疾患医療センター
が挙げられます。
地域包括支援センターとは?
「高齢者の総合相談窓口」の役割を担っており、医療・介護・福祉など専門知識を持った職員が、連携しながら高齢者の生活を包括的にサポートしています。
一つの市町村に一カ所以上設置されており、自治体直営や法人委託、介護事業所に併設されている場合も。また、名称も地域によって異なるので、どこに地域包括支援センターがあるか分からない場合は自治体に問い合わせてみましょう。
認知症疾患医療センターとは?
認知症を専門とし、認知症に関する情報発信や相談支援をしているところです。
「認知症疾患に関する鑑別診断の実施など、地域での認知症医療提供体制の拠点としての活動を行う事業」を目的としています。
全国496カ所に設置(令和4年5月現在)されており、地域の認知症専門の医療機関という立ち位置にいます。さまざまな条件を満たした医療機関を認知症疾患医療センターに任命しているため、適切にケアが受けられます。
少しでも認知症の症状が気になったときは、上記相談先に連絡してみてください。
2.地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の違い
高齢者の困りごとや悩みごとの身近な相談先として、地域包括支援センターのほかに居宅介護支援事業所があります。
この二つの大きな違いは、相談対象者が違うことと相談内容によって対応できるものが異なることです。
地域包括支援センターは、人口2〜3万人程度の地域に一カ所設置されており、その地域に住んでいる65歳以上の高齢者と家族や関係者であれば、誰でも相談できます。
介護サービスのみならず、近隣高齢者住民とのトラブルなど幅広く相談、対応してくれます。
一方で、居宅介護支援事業所は、要介護認定を受けた人が自宅で介護サービスなどを利用しながら生活できるよう支援する場所です。
ケアマネージャーが在籍しており、介護保険サービスのみならず、自治体や医療機関、介護施設などと連携しケアプランの作成や生活支援をしています。
介護サービスを利用したい高齢者と、施設や事業所を結ぶ架け橋として機能しています。
そのため、介護サービス以外の相談は受け付けてもらえないことがほとんどです。
厚生労働省においては「利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、ケアマネージャーが、利用者の心身の状況や置かれている環境に応じた介護サービスを利用するためのケアプランを作成し、そのプランに基づいて適切なサービスが提供されるよう、事業者や関係機関との連絡・調整を行います。」とされています。
3.認知症の検査をさせたい!スムーズに受診してもらう方法
「認知症」という言葉は、本人にとってはとてもセンシティブなものでもあります。病院へ検査に連れて行こうとしても「自分はまだ認知症じゃないから行かない」と怒る方もいるでしょう。
認知症検査をスムーズに受診してもらう方法を以下で紹介します。
・かかりつけ医に促してもらう
かかりつけ医など信頼のできる医療関係者から受診の提案をしてもらうと、本人も受け入れやすく受診へとつながります。
・健康診断の流れで受診してもらう
健康診断を受けた流れで主治医に受診を促してもらうと、スムーズに認知症検査を受診できるケースも。
・身近な知人や友人の体験談
身近な方で認知症検査をした方がいれば、体験談を聞いて受診につながる方もいます。
知人から直接体験談を聞けるのが理想ですが、「〇〇さん、脳の検査をしたら違う病気が見つかったみたい」など、同じ世代の方の話をすると効果的な場合もあります。
「認知症かもしれないから病院に行こう」など、ストレートに言うと本人の心を傷つけてしまい余計に受診しなくなる可能性もあります。
本人の尊厳もあるため、声かけは慎重に行うのが理想的です。
4.認知症の本人への接し方と介護疲れしない方法
身近な人が認知症になった時に、家族はどう接していいのか悩むこともあるでしょう。認知症になって一番不安に思うのはご本人でもあります。
そこで家族も不安にならずいつも通りに接してあげてください。認知症の正しい知識を持ち自然なサポートをするだけでも不安は減らせます。
認知症の方の介護は終わりの見えないものです。介護をしている家族が、疲れて体調を崩してしまわないためにできることはあります。
介護疲れしないために家族ができること
・かかりつけ医や専門科へ相談
・認知症への正しい知識と理解
・介護サービスの利用
・自分の時間の確保
専門機関に相談することで、今後どうしていくか、どう乗り越えていくか道筋が見えてきます。そして介護者も自分を大切にして「無理しない、頑張りすぎない」ということを忘れないでほしいです。
私たち介護従事者や認知症に携わる人は、一緒に悩みを解決していきたいと思っています。そして、本人や家族の負担を少しでも減らせれば幸いです。
参考記事
・認知症疾患医療センター運営事業(厚生労働省)
・認知症疾患医療センターの整備状況について(厚生労働省)
執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士7年目の30代2児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。