認知症の困った症状の一つが徘徊です。
ある日突然、認知症による徘徊が始まってしまい悩んでいる方も多いと思います。
徘徊すると転倒や脱水のリスクがありますし、認知症で注意力が低下しているので事故の危険性も高いのでどうしても徘徊を止めさせたい…。
それは介護をする人たち共通の思いでしょう。
徘徊が始まるタイミングは日によって異なるので、徘徊防止対策として窓ロックや玄関補助鍵を利用しあらかじめ出られないように対策する方も多いと思います。
一方で過剰な閉じ込めは「虐待」とみなされることはご存じでしょうか。
せっかく対策しても「虐待」だと訴えられるのは辛いですよね。
今回の記事では、徘徊対策を行うにはどのようなグッズがあるのか、虐待とみなされないためにはどのようなポイントに気を付けたらいいのかについて説明していきます。
ぜひ最後までご覧ください。
1.徘徊対策グッズにはどのようなものがあるのか
厚生労働省が介護保険で利用できるとしている徘徊対策グッズは「認知症老人徘徊感知器」に分類されていて、閲覧することが可能です。
「公益財団法人テクノエイド協会」の検索ページで「全ての福祉用具を探す」を選択し「分類コード」の部分で「215190」を選択するとその一覧を見ることができます。
この中で認可が下りているグッズの種類は大まかに
・ 離床センサー
・ 人感センサー
・ GPS
以上の3種があります。
2.徘徊対策に「施錠」は有効?
厚生労働省の認可を得ている福祉用具貸与グッズの中で「鍵」に相当するものは見つかりません。
厚生労働省の福祉用具貸与条件の一つに「ある程度の経済的負担があり、給付対象となることにより利用促進が図られるもの」(一般的に低い価格のものは対象外)というものがあり、安価なものは福祉用具貸与対象に入らないことを考慮しても、「鍵」に分類されるもので厚生労働省から介護保険対象の認可が下りているものはありません。
それは厚生労働省の「高齢者虐待防止の基本」に「外部との接触を意図的、継続的に遮断する行為」は身体的虐待にあたると明文化されているためでしょう。
徘徊対策グッズとして玄関補助鍵や内鍵は工事も必要とせず簡単に設置できるためよく販売されていますが、利用するには本来、
・ 本人や周りに危険性が呼ぶ可能性がある
・ 緊急時などやむを得ない場合
この2点を満たす必要があります。
さらに本人の同意が必要な場合もあるでしょう。
他にも施錠などの方法で徘徊対策した場合、火災や地震などの災害時、自力で対応できなくなってしまう恐れがあり、他の対策グッズと比較してもリスクが高い対策です。
また「内鍵」や「玄関補助錠」は割と安価で手に入れやすく設置も簡単ですが、24時間毎日使っていると前述の通り虐待だと訴えられてしまう可能性があります。
実際に、転倒などのリスクを心配し、外出できないよう施錠していたため認定を取り消された事業所もあり、「鍵」類を徘徊対策として使用するときには注意が必要です。
3.厚生労働省が介護保険で利用できるとしている
徘徊対策グッズの紹介
ここまで徘徊対策としての「施錠」について説明してきました。
以下では厚生労働省が「認知症老人徘徊感知機器」として認定している徘徊対策グッズについて説明していきます。
・離床センサー
離床センサーは、ベッドのマットレスの下や、起きた時に必ず足をつく場所に設置するマットで、重さが変わったときに知らせてくれるタイプのグッズです。
本人がベッドから離れたことにより重さが変化したときにスマホなどへ通知してくれますが、ベッドからの移動しか感知できないというデメリットがあります。
寝ていることが多い場合や深夜の徘徊対策としては効果的です。
・人感センサー
玄関などの出口に設置するセンサーで、設置すると設置した場所で出入りがあったときに光や音で通知してくれるシステムです。
センサーを使用しているため機器を見えづらくする工夫はしにくいというデメリットがありますが、センサーマットより安価で小型なので設置しやすいというメリットがあります。
24時間を通して出入り口の通過を知らせてくれるので利用しやすいグッズですが、一方で通知に気づかない場合素通りされてしまう可能性があり、注意が必要です。
・GPS
端末を本人に持ち歩いてもらうことで端末から電波を発信、衛星を利用し本人の居場所が特定できるようになるグッズです。
天候や建物に電波が左右されるデメリットや、本人に必ず持ち歩いてもらう必要がありますが、日本全国どこにいても居場所を把握できるというメリットがあります。
例え外出したことに気づかなくても居場所を把握できるので、一緒にいる時間が短い場合、同居でない場合も、いつでも居場所を把握できるという安心感があります。
4.徘徊対策で大切なのは「家を出ない」より
「見つけられる」こと
今回の記事では徘徊対策グッズを紹介してきましたが、やはり徘徊対策として効果が高いのはGPSでしょう。
なぜなら、玄関や窓を施錠したり玄関補助錠を使って対策を行うのは一見安価で簡単に見えますが、虐待とみなされるリスクや万が一の時に移動できないリスクがあるからです。
また、センサー類はセンサーを通り抜けたときの通知を見逃してしまうと居場所を把握することができません。
認知症を持つ高齢者が徘徊することへの対応で大切なのは、本人の尊厳を傷つけない事、外に出ることに固執させないことです。
そのためには、徘徊する本人にある程度自由に生活してもらう必要があります。
その点でGPS端末を持ち歩いて貰うことができれば、外に出かけてしまったとしても居場所を特定することが可能です。
さらに、認知症徘徊GPSセンターのGPSは本人が自由に行動できる範囲を設定し、範囲を越えたときにだけ通知が行くように設定ができるため、ある程度ご本人が自由に外出することもできます。
自由を認めることで介護する側も、介護される側も、ストレスの少ない介護を目指すことができますし、ある程度運動することで健康面でも効果が期待できるでしょう。
徘徊対策を検討されているのであれば、ぜひ一度GPSの導入を検討してみてください。
今回の記事が皆様の参考になれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考記事
・福祉用具情報システム(公益財団法人テクノエイド協会)
・高齢者虐待防止の基本 (厚生労働省)
執筆:岸田 梨江(介護福祉士、管理栄養士)
知的障がい児支援に10年携わり、現在高齢者介護施設勤務
豊富な経験を基に様々な視点から情報を提供いたします。