認知症徘徊コラム

認知症高齢者の徘徊で苦労している家族がGPSを導入する理由

認知症の高齢者を持つ家族は、同居している場合でも、同居していない場合でも身体、経済的な苦労はそれぞれ違います。しかし、精神的な負担やストレスは共に大きく計り知れないものです。
 認知症高齢者を介護する家族の悩みは、周辺症状の代表的なものである「妄想、介護拒否、徘徊」が特に多く、どう対処していいのか分からない家族もいます。介護者や家族の疲労、負担が蓄積すると、高齢者虐待や介護者の抑うつ発症などへと繋がりやすくなってしまい悪循環です。
少しでも負担やストレスを軽減するため、認知症高齢者の徘徊対策としてGPSを導入することはよくあり「心の安心」を得ることへと繋がります。
・常に見守りをしなければならない
・一人暮らしをしている認知症の家族が心配
・徘徊していないかいつも不安を感じている
などの悩みから、認知症の方を持つ家族がGPSを導入することが増えてきており、種類も携帯電話をはじめ、小型GPS、キーホルダーやお守り型、シューズタイプなど様々あります。
 認知症の方がGPSを持つことによって居場所が分かるということは、持たないときよりも「心の安心」に大きく貢献しています。今回は、認知症の方の徘徊で苦労している家族がGPSを導入したきっかけや、ご家族の負担などについて説明していきます。

1.GPSを持たない認知症の方の徘徊による家族の負担とは?

GPSを持っていない認知症の方が、徘徊をすることによって与える家族への負担は
・捜索の時間と手間
・事件事故に巻き込まれていないかという不安
・近所や警察に迷惑をかけるというプレッシャー
などと精神的にも肉体的にもあります。
認知症高齢者による徘徊は、ただあてもなくウロウロしている訳ではありません。
仕事に行く、買い物に行く、友人に会いに行くなど、昔の生活習慣や思い出から外出し徘徊につながるケースの他、住環境の変化によるストレス、服薬の変化など様々な要因があります。
たくさんの要因がある中で、徘徊を介護者や家族で対応していくのには限界があり、心と身体のバランスを崩してしまうことも。GPSを持っていない認知症高齢者が徘徊することは、家族の生活にも大きく悪影響を与えてしまいます。
 次では「認知症徘徊GPSセンターに寄せられたお客様の声」からGPSを導入したきっかけを一部紹介していきます

2.認知症の方の徘徊対策でGPSを導入した理由

認知症家族を抱える方が徘徊対策としてGPSを導入した実例を紹介します。
(認知症徘徊GPSセンター お客様の声2019年〜2021年)
1,認知症を患い出先で勝手にいなくなり大変な思いをした
 父親が認知症となり、出先などで勝手にいなくなってしまうことから、家族の負担が増加したためGPSを導入した例です。出先や遠方でいなくなってしまうと、探すのにも一苦労です。
2,家族の就寝中や入浴中にこっそり一人で出て行ってしまう
 同居家族にも自分の生活があるため、常に見守りができる状況ではありません。
早朝や夜間など家族が寝ているときや入浴中など、どんなに徘徊対策をしていても気がつかないうちに外に出て行って徘徊してしまうこともあります。
3,遠方で一人暮らししているため
 同居しておらず一人暮らししている家族が心配で、いざという時のためのお守りと安全安心のためにGPSを導入する実例も少なくありません。
 認知症の方にGPS機能を導入したあとの実際の効果は「家族の精神的な安心感」が大きく得られています。

実際に使っている(使っていた)方からは下記のような感想をいただいております。
・独居の父を見守るのにとても役に立ちました
・いざという時の精神的な安心感がありました
・いざとなったらGPSで探せるという家族の安心感は思った以上で有り難かった
その他にもGPSによって早めの捜索対応ができ、危険な場所から動けなかった家族を助けられたという声もあり、ご本人の身の安全にも繋がっています。

3.認知症高齢者がGPSを持つことによって得る家族のメリットと持出す方法

先ほどご紹介した実例から考えられるのは、認知症の方がGPSを活用をすることにより「本人の身の安全と家族の精神的なストレス、不安の軽減や安心感」というメリットを得ているということです。
 例えば同居している場合では、常に行動が気になってしまったり玄関のドアが開いた音がするとすぐに駆けつけたりと、見守っている家族は心が落ち着きません。
しかし、24時間認知症の方を見ることは不可能で肉体的な負担はもちろん、精神的にも疲労が溜まっていきます。
自宅での徘徊対策に見守りカメラや人感センサー、徘徊したときの対策にGPSを併用することがベストなのではないでしょうか。
 認知症高齢者にGPSを持ち出してもらうことへの家族の悩みはよくあります。その悩みに対応するGPSにも様々な形があり、携帯電話GPSのほか小型のキーホルダーやお守り、シューズに埋め込むタイプのものがあります。
しかし、認知症の方がGPSを持たないで外出してしまったり「必要ない」などと言って持ってくれなかったりするケースも多く、家族はGPSを持たせる工夫をしなくてはいけないことも。
本人がしっかりGPSを持てることが理想ですが、そう上手くはいきません。
拒否した場合の持ち出し方の工夫として
・お気に入りの服やよく着る服に取り付ける
・杖や鍵、ポーチに取り付ける
・専用の靴底や財布に入れる
などがあります。

 最近のGPSは持ち出しやすいシンプルなデザインが多く、持ち出すことに抵抗のある認知症高齢者の方でも「お守り買ってきたからつけてね」(認知症徘徊GPSセンターお守りケースの場合)など、ちょっとした声かけで持ってくれることもあります。

4.まとめ

認知症の方にGPSを持ってもらうことは、持たないときの負担を考えるとメリットの方が上回ります。
認知症高齢者の徘徊対策として家族がGPSの導入をすることはもちろん、介護事業所などでも取り入れており、今後も増えていくと予想されます。
介護者や家族の精神的な負担、ストレスが増えて心身ともに体調を崩してしまうのであれば、GPSを活用することが本人と家族にとってベストなのではないでしょうか。
 高齢者の一人暮らしや核家族が進む社会で、少しでも見守る家族の介護負担が軽減できればという想いがGPSの普及から感じられます。

参考記事
認知症の人を介護する家族等に対する効果的な支援のあり方に関する調査研究
 平成25年度老人保健事業推進費等補助金(老人健康増進等事業分)
 株式会社野村総合研究所 p11(中原 淳)

痴呆性疾患患者をもつ介護者における介護負担感と介護サービスの利用状況
(第46回 日本 老年医学会 学術集会記録)

https://www.ninchisho-haikai-gps.com/gps_rn/wp-content/themes/cure_tcd082/img/common/no_avatar.png

執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士7年目の30代2児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

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