認知症老人の徘徊対策にGPS発信機はとても重宝するアイテムです。
しかし、GPS発信機がいかに優秀でも、持ち歩いてもらえなければ意味がありません。
では、GPS発信機を持ち歩いてもらうためにはどんな工夫が必要でしょうか。
今回の記事ではGPS発信機を持ち歩きやすくするためのポイントについて書きました。
ぜひ最後までご覧ください。
1.GPSは身に着けてこそ効果を発揮!でもどんなものがいいの?
認知症のために徘徊してしまう老人が、徘徊したときにGPS発信機を持っていたら、いつでも居場所を特定することが出来るので、迅速に探し出すことができます。
見守っている家族が遠方にいたり、仕事中であったとしてもGPS信号を受信し居場所を把握できていれば、家族の不安を大幅に減らすことができるでしょう。
徘徊対策としてGPS発信機は大きな効果を発揮します。
しかし、認知症老人に”GPS発信機を持ち歩いてほしい”とお願いしても記憶障害があることが多いため、持ち歩いてもらえないことがほとんどです。
では取り付けるのではなく、スマートフォンやガラケーにGPSのアプリをインストールする方法なら簡単なのでは?と考えるかもしれません。
しかし、認知症の主な症状に記憶障害や見当識障害があるため”持って歩くもの”はどこかに置き忘れてしまう確率も高く、おススメとは言えないでしょう。
そもそも、GPS発信機ならどれでもいいのか、というとそうではありません。
GPS発信機の大きさはメーカーによってさまざまです。小さければ気にならないように取り付けることもできますが、大きいものだと持ち歩いてもらうのに苦労することも。
さらに、老人本人が気づきやすいところにGPS発信機を付けると、不要なものだと思われてGPS発信機を外してしまうことがあります。
また、GPS発信機をそのまま取り付けると”目立って恥ずかしいから”と発信機自体を嫌ってしまうことも考えられるのです。
このような悩みで、どうしたら持ち歩いてもらえるのか…とお悩みの方も多いと思います。
この”GPS発信機を持ち歩いてもらえない”という悩みに対して、有効なのは、”利用する老人本人が普段使っているアイテム”に目立たないようGPS発信機を取り付けることです。
そのことを踏まえ、徘徊対策でGPS発信機を検討するなら、
● できるだけ小型で気にならない
● 目立たない場所に取り付け可能
この2点に注意して選ぶと良いでしょう。
2.取り付けることで効果が期待できるのはどんなアイテム?
どんなアイテムにGPS発信機を取り付ければ自然に持ち歩いていただけるか、というのは認知症老人ご本人の生活習慣や好みによって違いがあります。
例えば、会社人間だった人なら名刺入れにいれておく、外出の時に財布を持って出かけるのなら財布に入れておく、お守りが好きならお守り袋に入れる…といった具合です。
しかし、どんな人にも共通して言えることが1つあります。
それは「外出するときは、”靴”を履いて出かける。」ということです。
今、GPS発信機の取り付けを検討しているなら、まずGPS発信機を”靴”に付けて試してみることをおススメします。
3.GPS発信機が入った靴ならどれでも大丈夫?
それなら”普段使いの靴にGPSを取り付けてみよう”と思うかもしれません。
しかし、GPS発信機は精密な機械です。
体重がかかるとすぐに壊れてしまいます。
また靴ひもなど目立つ場所につけると、すぐに外されてしまいがちです。
そのため、GPS発信機を自分の力で”普通の靴”に取り付けることはおススメしません。
その点、当社では靴底にGPSを内蔵できる専用の靴(専用シューズ)を取り扱っています。
中敷きの下にGPSが入る大きさの空洞があり、専用ケースに入れたGPSをその空洞に挿入するタイプの物です。
当社の専用シューズは認知症老人ご本人が履きやすくするために様々な工夫がされているシューズです。
例えばマジックテープで開口を広く取り足を入れやすくする、かかとについているリングを引っ張ることができるようにして専用シューズを履きやすくするなど、自分の力でも履きやすいように配慮したものとなっています。
また専用シューズは反射板を利用しているので、暗闇でも目立ちやすい仕様です。
GPS発信機を検討されるのであれば、ぜひ当社の専用シューズも一緒にご検討ください。
GPS発信機が入った靴がどのようなものか、どのような工夫がされているのか、さらに手触りや履き心地などのこだわりも確認することができます。
4.GPS発信機が入った靴をはいてもらうためには
もちろん、どんなにいい靴であったとしても”明日からこの靴にしてください”と認知症老人ご本人に頼んでも、それだけではうまくいかないことのほうが多いでしょう。
GPS発信機が入った靴を履いていただくには
1. GPS発信機が入った靴以外の靴は玄関から片付けておく
2. GPS発信機が入った靴に対してポジティブなイメージを持っていただけるような声掛けをする
といった工夫が必要です。
以下ではその理由について説明していきます。
1. GPS発信機が入った靴以外の靴は玄関から片付けておく
やはり、本人にとっては履きなれた靴のほうが履きやすいもの。
玄関に慣れ親しんだ靴があるとそちらのほうを履いてしまいますが、玄関にGPS発信機が入った靴しかなければ、多くの場合それを履いて出かけるようになります。
そのため、玄関に置くのはGPS発信機が入った靴のみにして、他の靴は片づけたほうがいいでしょう。
2. GPS発信機が入った靴に対してポジティブなイメージを持っていただけるような声掛け
をする
認知症を持つ老人は新しい出来事を忘れてしまいやすくなりがちですが、出来事に対する感情は残ります。
例えば、言い争いをしたことは忘れたのに、”嫌なことを言われて悲しい気持ちになったことは覚えている”ということのはその典型です。
そのため、新しい靴に対してポジティブなイメージを持てるよう声掛けをすることで、GPS発信機が入った靴に対して良いイメージを持っていただくことができます。
例えば、「最近転びやすいから、転ばないように新しい靴を買ったよ。」「孫からのプレゼントだよ。」等です。
良いイメージが残れば、GPS発信機が入った靴も履いてもらいやすくなるでしょう。
5.まとめ
認知症老人の徘徊対策を家族だけで行うことは大変な負担です。
しかし、普段の介助にGPS発信機を取り入れることができれば、家族の負担も大幅に減らすことができます。
今回紹介した”GPS発信機入りの靴”の情報が少しでもお役に立てれば幸いです。
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考記事
・認知症介護情報ネットワーク(認知症介護研究・研修センター)
・知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス 総合サイト こころの健康や病気、支援やサービスに関するウェブサイト(厚生労働省)
執筆:岸田 梨江(介護福祉士、管理栄養士)
知的障がい児支援に10年携わり、現在高齢者介護施設勤務
豊富な経験を基に様々な視点から情報を提供いたします。