認知症徘徊コラム

認知症の徘徊で行方不明になったときはどうすればいい?

 認知症患者が徘徊をすることによって行方不明になる可能性はとても高く、ご家族も心身ともに休まるときが少ないかと思います。
 認知症という症状は、高齢者において記憶や認識力が低下したり判断力が低くなったりなど、生活に支障をきたしてしまうことがあります。
その中でも「徘徊」は、特に深刻な問題となっており、徘徊と思われる症状が出る前段階から事前の対策が重要になってきます。
 認知症患者が徘徊で行方不明になってしまった場合、ご本人の命を守るためにも速やかな対応が求められます。
 本記事では、認知症患者が徘徊で行方不明になったときの対策・対処法について、発見が遅れた時のリスクについて詳しく説明しています。
よかったら最後までご覧ください。
 「行方不明になってしまったらどうしよう」といった不安を持って生活を送るよりも、事前に対策をしておき、実際に行方不明になってしまった際にスムーズに対応できるよう準備しておきたいものですね。

1.認知症患者の徘徊で行方不明になった時の対応

 認知症患者が徘徊で行方不明になってしまい、自宅やその周辺を15〜20分くらい探しても見つからない場合は、速やかに最寄りの警察署に通報しましょう。
それと同時に、近隣住民や地域のボランティア団体、地域包括支援センターなどにも協力を仰ぐことが有効です。
 
 警察に提供する情報は、行方不明になった人の特徴、最後に目撃された場所、愛用の場所、趣味などを含んだ、できるだけ詳細なものが望ましいです。
また、担当のケアマネジャーがいる場合は、ケアマネジャーにも連絡を入れておきましょう。

 そして、ここで好ましくない行動は「家族だけで探す」ことです。
例えば「迷惑をかけてしまうから」「あまり大ごとにしたくない」といったことから、家族だけで探すことになってしまうと発見に時間がかかってしまいます。
発見に時間がかかればかかるほど、命の危険性は高くなっていくので、家族だけで探すといった行動はあまりおすすめしません。

 警察や近所の方、防災無線放送、地域のSOSネットワークなどできるだけ周囲に頼り、一分一秒でも早く発見に繋げることが大切です。
 さらに行方不明になる前に対策や予防策を講じておくこともおすすめします。
次の項では事前の対策、予防策について説明しています。

2.事前の対策は?

 認知症患者の徘徊で行方不明を避けるのに非常に効果的なのは、事前に徘徊の予防対策を講じておくことです。
居住環境においては
● 見守りカメラやベッド離床センサーの設置
● 玄関ドアや窓の開閉感知機器の取り付け
● ドアの鍵を二重にする
などの対策ができます。

 また認知症本人にGPS機器を持たせたり、衣類に氏名や住所、電話番号などの身元情報を記しておくことや、身分証明書を携帯させたりするなど、緊急時に役立つ情報を常に手元に置くことも大切です。
介護施設においては、セキュリティ対策を強化し、施設内外での監視体制や行方不明になった際のスタッフの動きを共有することや、周知徹底しておくことが重要です。

3.SOSネットワークの登録も忘れずに

 地域の見守り・SOSネットワークも、行方不明時捜索に非常に役に立つということを覚えておくと良いでしょう。
 全国の自治体では、徘徊によって行方不明になりうる可能性の高い方の情報や特徴、顔写真などを事前に登録しておくことができる取り組みを実施しています。
●認知症高齢者等SOSネットワーク(横浜市)
●もやい徘徊SOSネットワーク(山口県周南市)
●はいかい高齢者等SOSネットワーク(神奈川県大和市)
など場所によって名前は異なりますが、取り組み内容としては同じです。

 これら地域全体で取り組む認知症徘徊SOSネットワークの目的は、行方不明者の早期発見につなげるほか、認知症患者本人やご家族が安心して外出できる環境を作ることを主としています。
 認知症徘徊SOSネットワークは、いざというときの為に早期発見に繋げることができるため、忘れずに登録してぜひ活用することをおすすめします。

4.GPS機器の活用が最も有効である

 行方不明者の捜索をする上で、物的なものとしてGPS機器は非常に役立つアイテムになります。
 「認知症徘徊GPSセンター」では、認知症患者の「徘徊」に特化したGPS機器のレンタル・販売をしており、年々GPS機器を利用される方が増えてきているようです。
GPS機器を使用するメリットは
●本人の居場所をリアルタイムで追跡できる
●日頃の行動パターンが分かる
●ご家族の不安を軽減できる
●行方不明時の早期発見につながる
●本人を事件や事故から少しでも守れる
などがあります。
 家族や介護スタッフが位置情報を通じて本人の位置を確認できるため、迅速な対応が可能となります。
GPS機器を持つことに抵抗があって持ってくれなかったり、持ち出すことを忘れて出かけてしまったりといったこともあるようですが、様々な持ち出し方の工夫やアイテムがあるので、こちらの記事を参考にしてみてください。
参考記事: 認知症徘徊対策のGPSを入れる「専用のお守り」は持出し策にもベスト

 当社のGPS機器では、初期費用0円で月額3,080円(税込)・1ヶ月単位でレンタルできる「レンタルプラン」がおすすめです。
お急ぎであれば決済完了後最短1〜3営業日で発送が可能なので、すぐにでもレンタルしたいという方は検討してみるといいでしょう。

5.発見が遅れた時のリスク

 行方不明者の発見が遅れると、いくつかの深刻なリスクが発生する可能性があります。
以下、例を見ていきましょう。

生存のリスク
 認知症患者が行方不明になる環境や気候によって、生存のリスクに直面する場合もあります。
また、適切な食事や水分の確保が難しくなり、寒冷や暑さになどによって健康にも悪影響を及ぼすことも考えられます。
医療的なリスク
 行方不明者が健康上に問題を抱えている場合、適切な医療を受けられないといったリスクがあります。
特に高齢者や認知症患者は、服薬や定期的な医療管理が必要な場合があります。
心理的な影響
 行方不明者が発見されないまま時間が経過すると、孤独感や不安、ストレスが増加し、深刻な心身の健康被害やストレス反応を引き起こす可能性があります。
事件・事故に巻き込まれる
  行方不明者が交通事故や何かしらの犯罪に巻き込まれる可能性が高くなります。
特に道路や都市部で徘徊している場合は、交通事故に巻き込まれる危険性が高まり、治安の悪い場所などでは犯罪に巻き込まれるなどのリスクも考えられます。
捜索の難しさ
 時間が経過すると、捜索が難しくなります。体力のある認知症患者は特に、広い範囲に移動している可能性があるため、時間経過とともに捜索が難航することもあります。

 このように、発見が遅れる場合でも様々なリスクが含まれており、行方不明者の早期発見は非常に重要であると言えます。
そのため、GPS機器の使用や地元の警察、自治体のSOSネットワークとの迅速な連携が早期発見のポイントとなってきます。
 認知症患者の徘徊時に行方不明になるリスクは高まっていますが、慎重かつ計画的な対応ができれば、そのリスクを軽減することも可能です。

6.まとめ

 認知症患者の「徘徊」が発生する原因の一つに「不安」や「混乱」が挙げられます。引越しをしたといった理由で、徘徊症状がひどくなったという事例もよく聞きます。
 不安を取り除いたり、混乱を落ち着かせたり、認知症患者本人の生活している場所が少しでも安心できる環境になるよう整えることは何よりも欠かせないことだと思います。

 そしてその安心感を高めるためにも、家族はもちろんのこと、地域住民とのコミュニケーションも重視し、地域ぐるみで総合的に支援を行うことがポイントになってくるのではないでしょうか。
 地域社会との協力、GPS技術の活用、事前の対策の徹底などが、認知症患者とその家族にとって安心感を提供する要素となっていくはずです。

参考
身元不明の認知症高齢者等に関する特設サイト(厚生労働省)
認知症高齢者等の行方不明・身元不明について(東京都福祉局)
認知症による行方不明ーいのちを守るために必要なことー
周南市もやい徘徊SOSネットワーク
認知症高齢者等SOSネットワーク(横浜市)
はいかい高齢者等SOSネットワーク(神奈川県大和市)

https://www.ninchisho-haikai-gps.com/gps_rn/wp-content/themes/cure_tcd082/img/common/no_avatar.png

執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士9年目の30代3児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。

関連記事