私たち認知症徘徊GPSセンターのお客様から寄せられる声では、「こんな遠くまで歩いてきたの?」「途中で電車乗って遠方まで移動したの?でもお金持ってないはず。」など、ご家族や保護した警察官なども驚くような体験談を聞かせていただいております。
認知症徘徊GPSセンターのGPSは、任意の自動測定間隔(10分毎、30分毎、60毎、自動測定無し)で位置検索を行いますので、その時間にどこにいたのかを正確に把握することができ、測定した場所・時間を線で繋げることで移動経路を把握しています。実は、ここがポイントで、現在地だけを把握するだけでは、そこまでの移動経路や移動手段(徒歩、自転車、電車、バス、タクシー等)を知る(想像する)ことはできませんので、「次」の対策をとることができません。
認知症の徘徊には、何かしらご本人の目的や理由等があるケースが多く見受けられます。例えば、認知症の方が夕方になると落ち着かなくなったり、声を荒げたり等という変化がみられる「夕暮れ症候群」ですが、既にご主人が亡くなられていたり、子どもがとうの昔に独立したにも関わらず、「主人のご飯を用意しないと」「スーパーに買い物に行かないと」「子供のお迎えに行かないと」といった具合に、ご本人の目的や理由が確認できる場合があります。目的や理由を知ろうとすること、考えることで、適切な声掛けや会話、地域との連携等、次の対策にも役立てることができます。だから、認知症徘徊の方の移動経路と時間、移動手段を把握することはとても大切なことなのです。
さて、前置きが長くなりましたが、私たち自身も、「認知症徘徊GPSセンターのGPS端末を持ち100キロ移動(歩く)した場合、正確に位置情報は表示されるのか」という疑問と不安が浮かび上がってきました。そこで、「よし、100キロ自分の脚(だけ)で移動してみよう」という探求心で、認知症徘徊演習で検証してみました。
一人で100キロも歩くまたは走るという人生経験はないので「柴又100Kマラソン(始発で間に合う!フラットで走りやすい!という情報をたよりに)」に便乗してきました。東京都葛飾区から江戸川河川敷を走り、茨城県五霞町で折り返す100Kウルトラマラソンです。朝6時30分にスタートして、22時00分に競技が終了するという過酷すぎる認知症徘徊演習の検証に、事務局員は不安に。2023年1月24日に申込み、それから約4カ月間(開催2023年5月21日)は、雨にも負けず、風にも負けず、暑さにも負けず、誘惑にも負けず、走る・歩く練習をしてきました。
結果、探求心と様々な方々の応援と運で、100キロを時間内に完走することができました。ゴールした時はGPSのスイッチを消す(GPS端末のスイッチを消すと、電源がオフになった場所も契約者にメールで通知されます)ことも忘れてしまい、それに気づいて背負っていたリュックサックからGPS端末を探そうにも、真っ暗だし、腕も上がらないし、GPS端末は小さいし・・・という何だかわからない状況でした。
■目的
東京都から茨城県の江戸川沿いを100キロ徘徊した場合でも、正確に表示されるか
■徘徊経路
東京都葛飾区から江戸川河川敷を走り、茨城県五霞町で折り返し、東京都葛飾区に戻る。
※GPS端末機は、100円ショップの小さな袋に入れて、リュックサックに入れる。
◎まとめ
徘徊演習では、100キロを走り、歩いたが正確に表示された。
(時計マークはGPS端末機を測位した位置でマークの色により測位精度(高:緑/中:青/低:赤)を見分けることができる
今回気づいたことのひとつに、認知症徘徊で水辺の事故は約4割という調査結果が公表されていますが、水辺は日影がないので、熱中症や低体温症にも気を付ける必要があるのではないかと感じました。あと100キロ移動したからこそ気づいた発見のひとつは、とにかく川沿いは似たような景色が続くので、自分がどこにいるかわからなくなってしまい、永遠と徘徊してしまい結果的に驚く距離の徘徊や、すれ違う人にお散歩している高齢者の方も多いので、異常や違和感に周囲の方が気付きにくいという環境も影響しているのではないかと思いました。
認知症徘徊やその疑いで少し心配な家族がいらっしゃる場合は、季節に合わせた服装や帽子、水分を持たせる等も必要だと思います。何より早く徘徊の事実に気づき、早く探す、対応するということが重要だと改めて実感しました。
さて、今回の検証は、認知症徘徊にフォーカスした検証としても、様々な気づきもありました。今後、お客様から寄せられる声で「自宅から200キロ離れた場所で保護されました」という状況になったら、認知症徘徊GPSセンターの事務局員はどうなってしまうのだろうと身震いしつつ、今回の100キロ徘徊演習の終わりにしたいと思います。