愛知県警のデータによると徘徊している高齢者は、近所や通行人などいわゆる「一般の方々」に発見されることが多く(約42%)、警察による発見は約27%、家族による発見は約6%という結果があります。
認知症の家族が徘徊して保護される事例はとても多く、自宅介護の大変さがよく理解できます。家族はきちんと見ていたつもりでも、知らない間に外に出て徘徊していたということはよくあり、保護されるたびに相手に頭を下げることは家族もとても辛いことです。
本記事では
・初めて徘徊保護されたとき、お礼はどうすれば良いか
・徘徊で何度も近所の方に保護されているのでお礼がしたい
など徘徊した認知症の家族を保護してくれた方にお礼は必要なのか、また何度もお世話になっている方へどうしてもお礼がしたいと悩んでいる方に対しての内容になっています。
また、認知症の方の行動パターンの把握と社会資源の活用のメリットについても書いています。ぜひ参考に読んでみてください。
1.認知症家族の徘徊保護へのお礼は「気持ち」
認知症の家族が徘徊し保護されたときの相手へのお礼は、手土産などでお金を使う必要はなく「感謝の気持ち」が何より大切です。
徘徊で警察やご近所の方にお世話になる機会は多くあり、都度申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうのは当たり前のこと。何か手土産でも…と考えていても、相手に気を遣わせてしまうこともあります。
また、認知症も進んでいくと症状が顕著に現れていき、その度に手土産などを持っていくのも負担がかかり大変です。本人の尊厳を傷つけないよう事情を話せば、相手方も理解してくれて次に徘徊をしてしまった際も徘徊保護に協力してもらえることもあります。
認知症の家族が徘徊し保護されたときはお金を使ってのお礼は必ずしも必要はなく、しっかり「感謝の気持ち」を伝えることが大切です。
またその場でお礼を言えなかった場合は、ご近所の方など相手が分かるのであれば電話などでお礼を言うのがおすすめです。
2.徘徊保護のお礼でおすすめの品
それでも近所の方に何度もお世話になっていて、何かお礼の品を渡したいと考えている方に相手が受け取りやすい品をご紹介します。しかし一番重要なのは気持ちで、あくまでもお礼の気持ちに添えるものとして捉えましょう。
・菓子折り
消費できる菓子折りは、よくある品で相手も受け取りやすいものとなります。高いものは必要なく、心ばかりとして渡す方がベストです。
・日用品
タオルやハンカチのほか、洗濯洗剤やキッチン洗剤などがおすすめです。特にタオルは老若男女使えるので気を遣わせないアイテムになります。
・ギフトカード
上記以外でお礼をしたいという場合におすすめなのがギフトカード。図書カードやお買い物券など500円から選べるものが多くあり、相手にとっても使いやすく選択肢の一つにできる気持ちの品です。
3.認知症家族の行動パターンを把握する大切さと社会資源の活用
認知症の方の介護は家族だけでは限界があり、地域や社会でサポートする必要性があります。そこで、インフォーマルな社会資源に頼り、徘徊の問題解決に繋げるのも一つの手。インフォーマルな社会資源とは、制度化されていない社会資源で、近隣の人や知人、友人、ボランティアや自治会のことです。
フォーマルな社会資源(行政や公的、民間サービスなど)に比べて、継続性や安定性、専門的なノウハウが低いという弱点がありますが、認知症本人にも近い存在のためネットワークが容易で柔軟に対応できる強みも持っています。
社会資源に頼りつつも、認知症の家族が徘徊した際の行動パターンを把握しておけば、早期発見へとつなげることが可能となります。例えば、お店や友人知人宅などよく行く場所を知っておくだけでも、手当たり次第に探し始めるより認知症の方の行動の予想でき探す時間も大幅に違ってきます。早期発見のためにも、立ち寄り先の電話番号も把握しておく方がベストでしょう。
4.認知症の方の徘徊保護をしてくれたお礼|まとめ
認知症の家族を保護してくれた方へのお礼は「感謝の気持ち」がとても大切です。
また、お礼をすることで面識ができ再度徘徊した際も声をかけてくれることで徘徊による事故も未然に防ぐことができます。
近所の方に何度も保護してもらっているため品でお礼がしたいと考えている方は、上記おすすめの品を参考にしてみてください。相手に気を遣わせず、お礼の気持ちに添える程度で選べると良いでしょう。
65歳以上の一人暮らし世帯や65歳以上の夫婦のみの世帯が年々増加している今、社会問題となりつつある超高齢化社会に向けて課題もたくさんあります。中でも、認知症の家族による徘徊は家族だけでは対処しきれない部分もあります。
社会資源を活用することによって、本人やご家族が安心して生活しやすい社会になっていくことを願います。その為にも高齢者を気にかけ、時には声をかけることでご家族の負担を少しでも減らすことができたらと思います。
参考記事
・認知症高齢者の徘徊・行方不明・死亡に関する研究 (桜美林大学老年学総合研究所)
・65 歳以上の者のいる世帯の状況
(厚生労働省.2019年国民生活基礎調査.I世帯数と世帯人員の状況)
・会資源の活用、連携・協働、開発 (日本福祉大学)
・認知症徘徊について 行動パターンを把握する (認知症徘徊GPSセンター)
執筆:腰塚 侑香里(介護福祉士)
介護福祉士7年目の30代2児の母。介護職の楽しさを発信するためwebライターとしても活動中。大学卒業後、金融機関に就職するもやりがいを感じられず介護職に転職。デイサービス→結婚を機にリハビリ施設へ。介護士として毎日楽しく高齢者に寄り添いながら働いています。